世界最強のマザーボードメーカーで知られ、現在ではPC本体自体もそれなりに売れている台湾ASUS社。
それが一世を風靡した商品がある。
あの5万円ノートパソコンショックで世の中を騒がせた「EeePC」の初代モデル4G-Xである。
当時のノートパソコン市場は「どいつもこいつも無駄な高性能高価格化」「Vista不況」で飽和状態。
新品は最低ランクの性能でも10万円以上、フラッグシップは30万円という有様であった。
そんな状況で「貧乏人でもメールとネットサーフィンを」という素朴なコンセプトで市場に投入されたのが4G-Xである。
時代に逆行する低性能、5万円という低価格、携行性の高さ、意外と悪くない品質、寿命が縮みにくいパーツ構成で世界に衝撃を与えた。
いくら安いとはいえ本当にネットサーフィン以上の作業は不得意であり画面も小さく、しかもストレージは溶接SSDの4GしかないのでWinXPの更新のために空き容量が足りず、とうていパソコン初心者には気軽に使っていけるものではなかった。
しかしながらLinuxに入れ替えれば容量や処理能力の問題はだいぶ緩和され、SDカードスロットもあるのでアクセス速度さえ気にしなければ作成したファイルや追加アプリを入れるための容量にはさほど困らない。
使いこなす知識さえあればいくらでも潜在能力を発揮できるとして、かえってパソコン玄人層からの人気が高まった。
そんなEeePCであるが、現代では自らの提唱した「ネットブック」というカテゴリはそのまんまタブレットPCやスマホに取って代わられ、代わりにウルトラブック(高価格・高性能・高携行性・短寿命)という意味のわからないカテゴリがその座を継承しその時代は過ぎ去ったかのように思える。
EeePCブランド自体は4G-X以降もモデルチェンジは進み現代にも生き続けている(と思ったら2013年6月の今はすでに生産終了であった ←追記@2013.6.25)が、4G-Xに比べて確かに初心者にも使いやすく高性能化しているものの4G-X当時のような圧倒的な価格差は無く、ただ単に小型で性能がそれなりのノートパソコンといった地位に甘んじてしまっているようだ。
あくまでも低価格・低性能・高携行性・長寿命こそがEeePCのアイデンティティであり、値段据え置きの安易な性能アップは邪道なのかもしれない。
そういった本来あるべき姿の「古きよきEeePC」は中古市場よりむしろオークションでよく見かける。
とくにキーボードやバッテリーを単体でのみ売りますっていうところがどっかのThinkPadを髣髴とさせ、それだけ世の中に愛された名機なのだなと感じさせてくれる。
一番理想的なのが初代4G-XのうちSSD換装が可能な後期モデルを生きたバッテリー含めて1万円以内で調達する事であろう。
私に言わせれば、この割り切った貧弱な構成こそが本来あるべきネットブックの姿である。
後になり発表されたHDD搭載のEeePCはもはや邪道であるという考えも見受けられるが、これについては私も同意見だ。
HDDなんか搭載したらせっかくの携行性や堅牢性が低下するし、なにより下手に容量が増えることで欲が出てしまい、本来のネットブック的な割り切った使い方から逸脱してしまうではないか。
ここで安易に内蔵SSDを新品に差し替えたり、大容量SDカードを調達すればさらに金がかかるので「もはや新品のネットブックや安いタブレットPC購入したほうが早いんじゃないの?」と言われるかもしれないので、ここはあえて我慢されたい。
トータル1万円という安値で調達したからこそ気軽にこれをもって外出でき、雑に扱えるものである。
おうちの母艦PCによってタダで手に入れた軽量級Linuxディストリビューションをたった4GのSSDに押し込んでお出かけする、これこそが現代におけるEeePCの究極の姿なのだ、きっと。
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